3 胃腸鎮痛鎮痙薬
胃腸の痛みの原因
・急な胃腸の痛みは、主として胃腸の過剰な動き(痙攣(けいれん))によって生じる。
・消化管の運動は副交感神経系の刺激によって亢進(こうしん)し、また、副交感神経系は胃液分泌の亢進にも働く。
・副交感神経系の刺激は、アセチルコリンという副交感神経の伝達物質が受容体と結合することで発生する。
胃腸鎮痛鎮痙薬に配合される主な成分
・胃腸鎮痛鎮痙薬は、抗コリン成分を中心に、パパベリン塩酸塩や局所麻酔成分、生薬成分を組み合わせて配合される。
a 抗コリン成分
・抗コリン成分は、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げることで、その働きを抑えて諸症状の緩和を図る成分である。
・胃腸鎮痛鎮痙薬では、以下の抗コリン成分やロートエキスが用いられる。
ロートエキス
・ロートエキスは、ロートコン(ナス科のハシリドコロまたはチョウセンハシリドコロの根茎および根を基原とする生薬)の抽出物である。抗コリン作用を示すアルカロイド【語句解説】を豊富に含んでいる。
【語句解説】アルカロイド
・主に植物由来のアルカリ性化合物の総称。一部、中性や弱酸性を示すものもある。
抗コリン成分の注意事項/副作用
・抗コリン成分やロートエキスは、副交感神経に作用するが、その作用対象は消化管に限らず、全身の副交感神経に作用する。そのため、様々な副作用に注意が必要となる。
・上記以外にも、注意すべき点や副作用がある。以下の内容も確認しておこう。
b パパベリン塩酸塩
・パパベリン塩酸塩は、消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣(けいれん)を鎮める作用を示すとされる。
・抗コリン成分と異なり、自律神経系を介した作用ではないが、眼圧を上昇させる作用を示すことが知られている。
・緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。
c 局所麻酔成分
・消化管の粘膜および平滑筋に対する麻酔作用による鎮痛鎮痙(ちんけい)の効果を期待して、アミノ安息香酸エチル、オキセサゼインなどの局所麻酔成分が配合されることがある。
・アミノ安息香酸エチルは、外用薬の有効成分としても用いられる。
・オキセサゼインは、局所麻酔作用と胃液分泌を抑える作用を期待され、胃腸鎮痛鎮痙(ちんけい)薬と制酸薬の両方の目的で使用される。
アミノ安息香酸エチルは6歳未満への使用を避ける
・アミノ安息香酸エチルについては、メトヘモグロビン血症【語句解説】を起こすおそれがあるため、6歳未満の小児への使用は避ける必要がある。
【語句解説】メトヘモグロビン血症
・赤血球中のヘモグロビンの一部がメトヘモグロビンに変化して、赤血球の酸素運搬能力が低下し、貧血症状を呈する病気。正常な赤血球では、メトヘモグロビンの割合はヘモグロビン全体の1%以下に維持されているが、メトヘモグロビン血症では10%以上になる。
オキセサゼインの副作用と注意点
・オキセサゼインは、使用にあたり精神神経系の副作用と、安全性の観点から使用を避けるべきとされる人が定められているので、注意しておこう。
複数の胃腸鎮痛鎮痙薬の服用は避ける
・胃腸鎮痛鎮痙(ちんけい)薬に配合されている成分は、胃腸以外に対する作用も示すものがほとんどであり、複数の胃腸鎮痛鎮痙薬が併用された場合、泌尿器系や循環器系、精神神経系などに対する作用(副作用)が現れやすくなる。そのため、胃腸鎮痛鎮痙薬を使用している間は、他の胃腸鎮痛鎮痙薬の使用を避けることとされている。
抗コリン成分の併用による副作用に注意
・抗コリン成分については、胃腸鎮痛鎮痙(ちんけい)薬以外の医薬品(かぜ薬、乗物酔い防止薬、鼻炎用内服薬等)にも配合されている場合があり、また、一部の抗ヒスタミン成分のように抗コリン作用を併せ持つものが配合されている場合(かぜ薬、睡眠改善薬、乗物酔い防止薬、鎮咳去痰薬、アレルギー用薬等)もある。
・抗コリン作用を有する成分を含有する医薬品同士が併用された場合、抗コリン作用が増強され、排尿困難、目のかすみや異常な眩(まぶ)しさ、頭痛、眠気、口渇、便秘等の副作用が現れやすくなる。
受診勧奨
・以下の症状が現れた場合、病院などの医療機関を受診すべきである。
・以下のケースでも、場合によっては病院を受診した方が良い場合がある。
胃腸以外を原因として腹部の痛みが現れることもある
・腹部の痛みは必ずしも胃腸に生じたものとは限らず、月経困難症、胆嚢(たんのう)炎、胆管炎、胆石症、急性膵炎(すいえん)などのように、胃腸以外の臓器に起因する場合がある。
・血尿を伴って側腹部に痛みが生じた時は、腎臓や尿路の病気が疑われる。これらについて胃腸鎮痛鎮痙(ちんけい)薬を使用することは適当でない。