問題を解く
GL309

1 胃の薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)

1)胃の不調、薬が症状を抑える仕組み

・胃のはたらきに異常が生じると、様々な症状が現れる。まずは胃の不調と症状の関係についておさえ、胃の薬の特徴についても確認していこう。

胃の不調による症状

胃の不調による症状

胃のけいれんと吐き気、嘔吐の関係

・吐きけや嘔吐(おうと)は、延髄にある嘔吐中枢の働きによって起こる。嘔吐中枢が刺激される経路はいくつかあるが、消化管での刺激が副交感神経系を通じて嘔吐中枢を刺激する経路も知られており、胃の痙攣(けいれん)等によって吐きけが起きている場合がある。

胃のけいれんと吐き気、嘔吐の関係

胃の薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)の特徴

・胃の不調を治すのが胃の薬の役割である。胃の薬は、主に制酸成分、健胃成分、消化成分に大別できる。詳しくは各項目で説明する。

胃の薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)の特徴

総合胃腸薬の特徴と注意点

・総合胃腸薬は、一般用医薬品の一つで、様々な胃腸の症状に幅広く対応できるよう、制酸、胃粘膜保護、健胃、消化、整腸、鎮痛鎮痙(ちんけい)、消泡【語句解説】等、それぞれの作用を目的とする成分を組み合わせた製品である。

・制酸と健胃のように相反する作用を期待するものが配合されている場合もあるが、胃腸の状態によりそれら成分に対する反応が異なり、総じて効果がもたらされると考えられている。しかし、消化不良、胃痛、胸やけなど症状がはっきりしている場合は、効果的に症状の改善を図るため、症状に合った成分のみが配合された製品が選択されることが望ましい。

【語句解説】消泡

・気泡は、空気などの気体が球状になって液体中に存在するものであり、気泡を生じた液体は、気体の体積の分だけ全体の体積が増す。液体状である消化管内容物中に無数の気泡が発生すると、その体積の増加によって消化管が刺激され、腹部の膨満感として知覚される。

・消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すこと(消泡)により、気体の吸収、排出が容易となる。

医薬部外品には各種制限あり

・健胃薬、消化薬、整腸薬又はそれらの目的を併せ持つものには、医薬部外品として製造販売されている製品もある。それらは人体に対する作用が緩和なものとして、配合できる成分やその上限量が定められており、また、効能・効果の範囲も限定されている。

a 制酸成分

・中和反応によって胃酸の働きを弱めること(制酸)を目的として、以下の成分又はこれらの成分を組み合わせたもの等が配合されている場合がある。

a 制酸成分

制酸成分は他の医薬品にも含まれることに注意

・制酸成分は他の医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬等)でも配合されていることが多い。併用によって制酸作用が強くなりすぎる可能性があるほか、高カルシウム血症、高マグネシウム血症等を生じるおそれがあるため、同種の無機塩類を含む医薬品との相互作用に注意する必要がある。

・また、カルシウム、アルミニウムを含む成分については止瀉(ししゃ)薬、マグネシウムを含む成分については瀉下(しゃげ)薬に配合される成分でもあり、それぞれ便秘、下痢等の症状に注意することも重要である。

b 健胃成分

・味覚や嗅覚を刺激して反射的な唾液や胃液の分泌を促すことにより、弱った胃の働きを高めることを目的として以下の生薬成分が配合されている場合がある。

・これらの生薬成分が配合された健胃薬は、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽(しゃへい)する方法で服用されると効果が期待できず、そのような服用の仕方は適当でない。

b 健胃成分

オウバク(黄柏)、オウレン(黄連)

・オウバク※、オウレン※※は、いずれも苦味による健胃作用を期待して用いられる。

※ミカン科のキハダ又はフェロデンドロン・キネンセの周皮を除いた樹皮を基原とする生薬。

※※キンポウゲ科のオウレン、コプティス・キネンシス、コプティス・デルトイデア又はコプティス・テータの根をほとんど除いた根茎を基原とする生薬。

オウバク

オウバク(黄柏)、オウレン(黄連)

オウレン

オウバク(黄柏)、オウレン(黄連)

・日本薬局方収載のオウバク末(オウバクを粉末にしたもの)、オウレン末は、止瀉(ししゃ)薬としても用いられる。また、日本薬局方収載のオウバク末は、外用薬としても用いられる。

・オウバクのエキス製剤は、苦味による健胃作用よりも、ベルベリン【語句解説】による止瀉(ししゃ)作用を期待して、消化不良による下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便等の症状に用いられる。

【語句解説】ベルベリン

ベルベリンは、生薬のオウバクやオウレンの中に存在する物質のひとつであり、抗菌作用のほか、抗炎症作用も併せ持つとされる。

健胃成分(味覚や嗅覚に対する刺激以外の成分)

・味覚や嗅覚に対する刺激以外の作用による健胃成分として、乾燥酵母やカルニチン塩化物が用いられることがある。

乾燥酵母

・乾燥酵母は、胃腸の働きに必要な栄養素を補給することにより、胃の働きを高めるものと考えられている。

カルニチン塩化物

・カルニチン塩化物は、生体内に存在する有機酸の一種であり、その働きは必ずしも明らかにされていないが、胃液分泌を促す、胃の運動を高める、胃壁の循環血流を増す等の作用があるとされ、胃の働きの低下や食欲不振の改善を期待して、胃腸薬や滋養強壮保健薬に用いられる。

c 消化成分

・消化成分は、消化酵素を含む成分である、栄養素の消化には様々な消化酵素が作用している。それらの消化酵素を含有することで、消化を促すのが消化成分の役割である。

c 消化成分

胆汁分泌の促進成分

・胃の薬には、脂肪の吸収に必要な胆汁の分泌を促す成分が含まれることもある。

胆汁分泌の促進成分

d その他の成分

・胃の薬には、その他にも①胃粘膜の保護、修復成分や、②胃粘膜の炎症を和らげる成分、③消泡成分、④胃液分泌抑制成分が用いられることがある。成分の種類が多いので、しっかり覚えておこう。

① 胃粘液保護・修復成分

・胃粘液の分泌を促す、胃粘膜を覆って胃液による消化から保護する、荒れた胃粘膜の修復を促す等の作用を期待して以下の成分が配合される。

① 胃粘液保護・修復成分

テプレノンの肝機能障害以外の副作用

・テプレノンについては、肝機能障害以外の副作用として腹部膨満感、吐きけ、腹痛、頭痛、皮下出血、便秘、下痢、口渇が現れることがある。

② 胃粘膜の炎症を和らげる成分(抗炎症成分)

・胃粘膜の炎症を和らげることを目的として配合される。

② 胃粘膜の炎症を和らげる成分(抗炎症成分)

③ 消泡成分

・消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として、ジメチルポリシロキサン(別名ジメチコン)が配合されることがある。

④ 胃液分泌抑制成分

・胃液の分泌は副交感神経系からの刺激によって亢進(こうしん)することから、過剰な胃液の分泌を抑える作用を期待して、アセチルコリン(副交感神経の伝達物質)の働きを抑えるロートエキスやピレンゼピン塩酸塩が配合されることがある。

・これらの成分を含有する胃腸薬では、胃腸鎮痛鎮痙(ちんけい)薬や乗物酔い防止薬との併用を避ける必要がある。

・なお、ヒスタミンも胃液分泌に関与する伝達物質のひとつであり、胃液分泌を抑制することを目的として、ヒスタミンの働きを抑える成分が配合された医薬品がH2ブロッカーと呼ばれる製品群である。

ピレンゼピン塩酸塩の特徴と注意

・ピレンゼピン塩酸塩は、消化管の運動にはほとんど影響を与えずに胃液の分泌を抑える作用を示すとされる。しかし、消化管以外では一般的な抗コリン作用のため、排尿困難、動悸(どうき)、目のかすみの副作用を生じることがある。

・排尿困難の症状がある人、緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。

・また、使用後は乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。なお、まれに重篤な副作用としてアナフィラキシーを生じることがある。

受診勧奨

受診勧奨

食道裂孔ヘルニア、胃・十二指腸潰瘍、胃ポリープ等の懸念

・一般用医薬品の胃薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)は、基本的に、一時的な胃の不調に伴う諸症状を緩和する目的で使用されるものであり、慢性的に胸やけや胃部不快感、胃部膨満感等の症状が現れる場合、又は医薬品を使用したときは治まるが、やめると症状がぶり返し、医薬品が手放せないような場合には、食道裂孔ヘルニア【語句解説】、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、胃ポリープ等を生じている可能性も考えられ、医療機関を受診するなどの対応が必要である。

【語句解説】

・胃の一部が横隔膜の上に飛び出して、胃液が食道に逆流しやすくなる状態。

制酸薬で胸焼け、吐きけ、嘔吐は予防できない

・制酸薬は、胃内容物の刺激によって促進される胃液分泌から胃粘膜を保護することを目的として、食前又は食間に服用することとなっているものが多いが、暴飲暴食による胸やけ、吐きけ(二日酔い・悪酔いのむかつき、嘔気(おうけ))、嘔吐等の症状を予防するものではない。

・「腹八分目を心がける」「良く噛んでゆっくりと食べる」「胃液の分泌を過度に高めることがある香辛料やアルコール、カフェイン等を多く含む食品【語句解説】の摂取を控えめにする」等、生活習慣の改善が図られることも重要である。

・嘔吐に発熱や下痢、めまいや興奮を伴う場合、胃の中に吐くものがないのに吐きけが治まらない場合等には、医療機関を受診するなどの対応が必要である。

・特に、乳幼児や高齢者で嘔吐が激しい場合には、脱水症状を招きやすく、また、吐瀉(としゃ)物が気道に入り込んで呼吸困難を生じることもあるため、医師の診療を受けることが優先されるべきである。

胃の薬の服用方法

・胃の薬は、健胃成分、消化成分、制酸成分などが、その治療目的に合わせて組み合わされるが、服用のタイミングには違いがあるのでおさえておこう.

胃の薬の特徴による服用タイミングの違い

胃の薬の服用方法