5 鎮暈薬(乗物酔い防止薬)
平衡機能とめまい
・人間は、体を動かしたりして平衡(へいこう。バランス)が変化しても、平衡機能により調整を行っている。
・この平衡機能に異常が起こると、めまい(眩暈〔げんうん〕)が起こる。
乗り物酔い防止薬
・乗物酔い防止薬は、乗物酔い(動揺病)によるめまい、吐きけ、頭痛を防止し、緩和することを目的とする医薬品である。
乗り物酔い防止薬の代表的な配合成分
・鎮暈薬(ちんうんやく)は、抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分、鎮静成分、キサンチン系成分、局所麻酔成分という主に6つの成分を配合している。
a 抗めまい成分(ジフェニドール塩酸塩)
・ジフェニドール塩酸塩は、抗ヒスタミン成分と共通する類似の薬理作用を示し、海外では制吐薬やめまいの治療薬として使われてきた。日本においては専ら抗めまい成分として用いられている。概要と副作用等について確認しておこう。
b 抗ヒスタミン成分
・抗ヒスタミン成分は、延髄にある嘔吐(おうと)中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える。概要について確認しておこう。
c 抗コリン成分
・抗コリン作用を有する成分は、中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減させるとともに、末梢では消化管の緊張を低下させる作用を示す。概要について確認しておこう。
d 鎮静成分
・乗物酔いの発現には、不安や緊張などの心理的な要因による影響も大きい。それらを和らげることを目的として、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素のような鎮静成分が配合されることがある。
e 中枢神経系を興奮させる成分(キサンチン系成分)
・脳に軽い興奮を起こさせて平衡(へいこう)感覚の混乱によるめまいを軽減させることを目的として、キサンチン系成分(カフェイン〔無水カフェイン、クエン酸カフェイン等を含む〕やジプロフィリン)が配合されることがある。カフェインには、乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用も期待される。
・ただし、カフェインが配合されているからといって、抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分又は鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではない。
f 局所麻酔成分
・胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐(おうと)刺激を和らげ、乗物酔いに伴う吐き気を抑えることを目的として、アミノ安息香酸エチルのような局所麻酔成分が配合されることがある。
・アミノ安息香酸エチルの使用によりメトヘモグロビン血症【語句解説】を起こす恐れがあるため、6歳未満への使用は避ける必要がある。
【語句解説】メトヘモグロビン血症
・赤血球中のヘモグロビンの一部がメトヘモグロビンに変化して、赤血球の酸素運搬能力が低下し、貧血症状を呈する病気。 正常な赤血球では、メトヘモグロビンの割合はヘモグロビン全体の1%以下に維持されているが、メトヘモグロビン血症で は10%以上になる。
g その他(ビタミン成分)
・吐きけの防止に働くことを期待して、以下のビタミン成分が配合されることがある。
・ピリドキシン塩酸塩
・ニコチン酸アミド
・リボフラビン
乗り物酔い防止薬の副作用
・乗物酔い防止薬に配合される成分の多くは眠気を促す作用があるので、乗物等の運転時には使用を控える必要がある。なお、乗物酔い防止薬には、主として吐き気を抑えることを目的とした成分も配合されるが、つわりに伴う吐きけへの対処として使用することは適当でない。
相互作用
・乗り物酔い防止薬の配合成分と他の薬の配合成分が重複して、鎮静作用や副作用が強く現れるおそれがあるので、他の薬との併用は避けるべきである。
受診勧奨等
・乗物酔いに伴う一時的な症状としてでなく、日常においてめまいが度々生じる場合には、基本的に医療機関を受診するなどの対応が必要である。その場合、動悸(どうき)や立ちくらみ、低血圧などによるふらつきは、平衡(へいこう)機能の障害によるめまいとは区別される必要がある。