3 眠気を促す薬
睡眠に関するトラブルと催眠鎮静薬(睡眠改善薬)の役割
睡眠に関するトラブルと影響
・はっきりした原因がなくても、日常生活における人間関係のストレスや生活環境の変化等の様々な要因によって自律神経系のバランスが崩れ、寝つきが悪い、眠りが浅い、いらいら感、緊張感、精神興奮、精神不安といった精神神経症状を生じることがある。また、それらの症状のために十分な休息が取れず、疲労倦怠(けんたい)感、寝不足感、頭重等の身体症状を伴う場合もある。
催眠鎮静薬の役割
・催眠鎮静薬とは、睡眠に関するトラブルが生じたときに睡眠を促したり、精神のたかぶりを鎮めたりすることを目的に使用される医薬品である。
・医療用医薬品で不眠改善のために処方されるものを「催眠鎮静薬」、一般用医薬品では「睡眠改善薬」または「睡眠補助薬」と呼ぶ。
眠気を促す薬の分類
代表的な配合成分等、主な副作用
・眠気を促す薬には、抗ヒスタミン成分とブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素が主に配合される。その他、生薬成分や漢方処方製剤も用いられる。
ヒスタミンと覚醒の維持
・ヒスタミンは、脳の下部にある睡眠・覚醒(かくせい)に関与する部位で神経細胞の刺激を介して、覚醒の維持や調節を行う働きを担う生体内情報伝達物質である。
・ヒスタミンと受容体が結合すると、中枢神経系の覚醒、興奮が起こる。
ヒスタミンの作用が弱まると、眠気が起こる
・眠気を促す薬に配合されるジフェンヒドラミン塩酸塩【語句解説】は、ヒスタミンによる刺激の発生を抑える作用がある。ヒスタミンによる刺激が減ると、脳の覚醒(かくせい)が妨げられ、眠気が促される。
【語句解説】ジフェンヒドラミン塩酸塩
・抗ヒスタミン成分の中でも特に中枢作用が強い。脳内におけるヒスタミンによる刺激の発生を抑えるため、眠気が促される。
抗ヒスタミン成分の使用における注意
・抗ヒスタミン成分は、眠気を促す成分であるため、服用に注意すべき人や服用後に避けるべき行動がある。確認しておこう。
慢性的な不眠症状や不眠症向けではない
・抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、睡眠改善薬として一時的な睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い)の緩和に用いられるものであり、慢性的に不眠症状がある人や、医療機関において不眠症の診断を受けている人を対象とするものではない。
妊娠中や15歳未満への使用は避ける
・妊娠中にしばしば生じる睡眠障害は、ホルモンのバランスや体型の変化等が原因であり、睡眠改善薬の適用対象ではない。妊婦又は妊娠していると思われる女性には、睡眠改善薬の使用は避ける。
・小児及び若年者では、抗ヒスタミン成分により眠気とは反対の神経過敏や中枢興奮などが現れることがある。特に15歳未満の小児ではそうした副作用が起きやすいため、抗ヒスタミン成分を含有する睡眠改善薬の使用は避ける。
・他の医薬品の場合も、抗ヒスタミン成分を含有するもの(抗アレルギー薬など)には注意する。
抗ヒスタミン成分の服用後は運転や機械操作×
・抗ヒスタミン成分を含有する医薬品を服用後は、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事させてはならない。
ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素の特徴
・いずれも脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする作用がある。大脳皮質の機能を抑制し、催眠・鎮静作用を現す。
・眠気を促す薬に含まれているほか、解熱鎮痛薬や鎮暈薬(乗り物酔い薬)に鎮痛作用を助ける目的で配合されることもある。
ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素の注意点
・ブロモバレリル尿素やアリルイソプロピルアセチル尿素は、依存性を生じる成分であり、使用を避けるべきケースも多い。十分注意しておこう。
ブロモバレリル尿素の依存性
・反復して摂取すると依存を生じることが知られており、これらの成分が配合された医薬品は、本来の目的から逸脱した使用(乱用)に注意が必要である。
・なお、ブロモバレリル尿素は、「濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品」の一つに指定されている。なお、ブロモバレリル尿素等の鎮静成分を大量摂取したときの応急処置等は、通常の使用状況における場合とは異なり、高度な専門的判断を必要とする。
【語句解説】ベンゾジアゼピン系成分
・抗不安薬、催眠薬、抗けいれん薬、筋弛緩(しかん)薬として用いられる。
・関係機関の専門家に相談する、昏睡や呼吸抑制が起きているようであれば直ちに救命救急が可能な医療機関に連れて行く等の対応を取ることができるよう、十分な説明がなされるべきである。
c 生薬成分
・神経の興奮・緊張緩和を期待してチョウトウコウ、サンソウニン、カノコソウ、チャボトケイソウ、ホップなどの生薬成分が複数配合される製品がある。
・生薬成分のみからなる鎮静薬であっても、複数の鎮静薬の併用や、長期連用は避けるべきである。
・カノコソウ、サンソウニン、チャボトケイソウ、ホップ等を含む製品は、医薬品的な効能効果が標榜または暗示されていなければ食品(ハーブ等)として流通可能な点に注意が必要である。
・また、生薬成分のみからなる鎮静薬や漢方処方製剤の場合、飲酒を避けることとはなっていないが、アルコールが睡眠の質を低下させ、医薬品の効果を妨げることがある。
相互作用
・眠気を促す薬の使用にあたっては、以下の相互作用に気をつけておきたい。
慢性的な不眠は受診が必要
・不眠に対して一般用医薬品で対処可能なのは、基礎疾患がない人の一時的な不眠である。慢性的に不眠が続いているケースでは医療機関を受診してもらう。
・基本的に、不眠に対して一般用医薬品で対処することが可能なのは、特段の基礎疾患がない人における、ストレス、疲労、時差ぼけ等の睡眠リズムの乱れが原因の一時的な不眠や寝つきが悪い場合である。
主な睡眠障害の種類
・以下の障害が慢性的に続いている場合は、鬱(うつ)病等の精神神経疾患や、何らかの身体疾患に起因する不眠、又は催眠鎮静薬の使いすぎによる不眠等の可能性も考えられるため、医療機関を受診させるなどの対応が必要である。