1 かぜ薬
かぜの諸症状
・かぜ(感冒)は、主にウイルスが鼻や喉などに感染して起こる上気道の急性炎症の総称である。
・「かぜ」は単一の疾患ではなく、医学的には「かぜ症候群」という。
・かぜに罹患(りかん)すると、以下のように呼吸器症状と全身症状が組み合わさって現れる。
かぜの原因(約8割はウイルス)
・かぜの原因の約8割はウイルス(ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなど)の感染によるものである。
・残りは細菌の感染を原因とするものが多いが、冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性の要因による場合もある。
かぜに類似した症状を起こす疾患
・以下の疾患(病気)では、かぜとよく似た症状が現れる。急激な発熱を伴う場合や、症状が4日以上続くとき、症状が重篤なときはかぜでない可能性が高い。
インフルエンザはかぜとは別
・インフルエンザ(流行性感冒)は、かぜと同じようにウイルスが呼吸器に感染して起こるものだが、感染力が強く、重症化しやすいため、かぜとは区別して扱われる。
・ただし、一般の生活者にとっては識別が必ずしも容易ではない。医薬品等の販売に従事する専門家においては、インフルエンザ流行期等には購入者に注意を促したり、解熱鎮痛成分がアセトアミノフェンや生薬成分のみからなる製品を提案する等の対応が重要となる。
かぜ薬の概要
・かぜは、生体に備わる免疫機構により、ウイルスが消滅すれば自然に治癒するので、安静にして休養し、栄養、水分を十分に摂るのが基本となる。
・かぜ薬は、かぜの諸症状の緩和を目的として使用される医薬品の総称であり、総合感冒薬とも呼ばれる。
かぜ薬の効能
かぜ薬はウイルスを除去「しない」
・かぜ薬は、咳で眠れなかったり、発熱で体力を消耗するなどの諸症状の緩和を図る対症療法薬である。ウイルスの増殖を抑えたり、ウイルスを体内から除去するものではない。
症状がはっきりしている場合は、総合感冒薬以外を選んだ方が良い場合もある
・「かぜだからかぜ薬を選ぶ」というのは最適とは限らない。症状がはっきりしている場合は、たとえば発熱なら解熱鎮痛薬、咳なら鎮咳去痰(ちんがいきょたん)薬、鼻水なら鼻炎を緩和する薬を選ぶのが望ましい。症状がみられないのに不要な成分が配合されていると、無意味に副作用のリスクが高まってしまう。
かぜ薬の主な配合成分等
・かぜ薬に配合される主な解熱鎮痛成分は以下の通り。詳細は各項目で説明する。
a 解熱鎮痛成分
・かぜ薬には、様々な種類の解熱鎮痛成分が配合される。解熱鎮痛成分を持つもの、解熱作用を持つもの、鎮痛作用を持つものに大別される。
・一般の生活者にとっては、かぜとインフルエンザとの識別は必ずしも容易ではない。登録販売者は、インフルエンザの流行期など、必要に応じて購入者に注意を促したり、解熱鎮痛作用がアセトアミノフェンや生薬成分のみからなる製品の選択を提案すべきである。
解熱作用がある生薬成分
ジリュウ
他の解熱鎮痛成分と組み合わせて配合される生薬成分
ショウキュウ ケイヒ
その他、解熱作用を期待して含まれる生薬成分
ゴオウ カッコン サイコ ボウフウ ショウマ
その他、鎮痛作用を期待して含まれる生薬成分
センキュウ コウブシ
b くしゃみや鼻汁を抑える成分(抗ヒスタミン成分、抗コリン成分)
・くしゃみや鼻汁を抑える成分として、抗ヒスタミン成分と抗コリン成分が配合される。
※「クロルフェニラミンマレイン酸塩」と「マレイン酸クロルフェニラミン」は、いずれもクロルフェニラミンとマレイン酸からなる同じ物質である。今後出てくる「塩酸塩」、「リン酸塩」等その他の物質についても同様である。
c 鼻粘膜の充血を和らげ、気管・気管支を拡げる成分(アドレナリン作動成分)
・かぜ薬に含まれる主なアドレナリン作動成分は以下の通り。
d 咳を抑える成分(鎮咳成分)
・かぜ薬に配合される主な鎮咳(ちんがい)成分は以下の通り。コデインリン酸塩水和物とジヒドロコデインリン酸塩には依存性があることに注意しよう。また、これらの咳止め成分は12才未満の小児には使用禁忌となっている。
e 痰の切れを良くする成分(去痰成分)
・かぜ薬に配合される主な去痰(きょたん)成分は以下の通り。生薬成分が用いられることも多い。
f 炎症による腫れを和らげる成分(抗炎症成分)
・鼻粘膜や喉の炎症による腫れを和らげることを目的に配合される。成分によっては副作用が懸念されるので、注意が必要である。
セミアルカリプロティナーゼ、ブロメライン
・いずれもタンパク質分解酵素で、体内で産生される炎症物質(起炎性ポリペプチド)を分解する作用がある。
・炎症を生じた組織では、毛細血管やリンパ管にフィブリン類似の物質が沈着して炎症浸出物が貯留しやすくなるが、それらの沈着物質と分解して浸出物の排出を促し、炎症による腫れを和らげる。
・セミアルカリプロティナーゼには、痰粘液の粘り気を弱めて痰を切れやすくするはたらきもある。
■ 血液凝固異常に注意
・セミアルカリプロティナーゼ、ブロメラインとも、フィブリノゲンやフィブリンを分解する作用がある。血液凝固異常がある人では出血傾向を悪化させるおそれがあるので、医師や薬剤師への相談が必要。
・血液凝固異常がない人でも、まれに血痰や鼻血などの出血性の副作用を生じることがある。
■ 肝機能障害がある人でも注意
・肝機能障害があると代謝や排泄が遅延して、肝機能障害の症状が現れやすくなる。肝臓病を抱える人は医師や薬剤師に相談すべきである。
トラネキサム酸
・体内での起炎物質の産生を抑制することで炎症の発生を抑え、腫れを和らげる。
■ 血栓のある人では注意
・トラネキサム酸は、凝固した血液を溶解されにくくするはたらきもあるため、血栓のある人(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎など)や血栓を起こすおそれのある人に使用する場合は、医師や薬剤師に相談する必要がある。
グリチルリチン酸二カリウム
・グリチルリチン酸二カリウムの作用本体であるグリチルリチン酸は、化学構造がステロイド性抗炎症成分に類似していることから、抗炎症作用を示すと考えられている。
・グリチルリチン酸を含む生薬成分として、カンゾウが配合されることもある。
■ グリチルリチン酸は過剰摂取・長期連用に注意
・医薬品ではグリチルリチン酸として1日摂取量が200mgを超えないよう容量が定められているが、グリチルリチン酸はかぜ薬以外の医薬品に含まれていたり、甘味料として一般食品や医薬部外品に広く用いられる。登録販売者は、購入者に対してグリチルリチン酸の摂取量が継続して過剰にならないよう注意を促す必要がある。
・どのような人が対象であっても、1日最大服用量がグリチルリチン酸として40mg以上となる製品は長期連用を避ける。
■ グリチルリチン酸の大量摂取と偽アルドステロン症
・グリチルリチン酸を大量に摂取すると、偽アルドステロン症を生じるおそれがある。むくみ、心臓病、腎臓病または高血圧の人、高齢者では偽アルドステロン症を生じるリスクが高い。そのため、それらの人に1日最大服用量が40mg以上の製品を使用する場合は、事前に医師または薬剤師に相談する。
・それとともに、偽アルドステロン症の初期症状に常に留意するなど、慎重に使用する。
鎮静成分
・解熱鎮痛成分の鎮痛作用を補助する目的で、以下の成分が配合されることがある。
ブロモバレリル尿素
アリルイソプロピルアセチル尿素
※これらの鎮静成分には、いずれも依存性があることに留意する必要がある。
i 胃酸を中和する成分(制酸成分)
・解熱鎮痛成分(生薬成分の場合を除く)による胃腸障害の軽減を目的として、以下の成分が配合されることがある。
いずれも制酸成分
ケイ酸アルミニウム
酸化マグネシウム
水酸化アルミニウムゲル
※なお、この場合、胃腸薬のように、胃腸症状に対する薬効を標榜することは認められていない。
j カフェイン類
・解熱鎮痛成分(生薬成分の場合を除く)の鎮痛作用を補助する目的で、以下の成分が配合されることがある。
カフェイン
無水カフェイン
安息香酸ナトリウムカフェイン
・なお、カフェイン類が配合されていても、必ずしも抗ヒスタミン成分や鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではない。
k ビタミン成分等
・かぜの時に消耗しやすいビタミンまたはビタミン様物質を補給することを目的として、以下のビタミンを配合する場合がある。
かぜ薬の主な副作用
・かぜ薬の重篤な副作用は、配合されている解熱鎮痛成分(生薬成分を除く。)によるものが多い。まれに、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、喘息(ぜんそく)、間質性肺炎が起きることがあるが、これらはかぜ薬(漢方処方成分、生薬成分のみから成る場合を除く。)の使用上の注意では、配合成分によらず共通に記載されている。
かぜ薬の相互作用
・かぜ薬には、通常、複数の有効成分が配合されているため、他のかぜ薬などが併用されると、同じ成分又は同種の作用を持つ成分が重複して、効き目が強くなりすぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがある。その他、アルコールの摂取にも気をつける必要がある。
受診勧奨
・以下のケースでは、病院等を受診してもらうべきである。