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薬の作用のしくみ/1)薬の生体内運命

薬の作用(全身作用と局所作用)

・医薬品の作用方法として、全身作用と局所作用の2つが挙げられる。それぞれの特徴を確認しておこう。

全身作用と局所作用

薬の作用(全身作用と局所作用)

・内服薬は全身作用を示すものが多いが、膨潤性下剤や生菌製剤等のように、有効成分が消化管内で作用するものもあり、その場合に現れる作用は局所作用である。また、胃腸に作用する薬であっても、有効成分が循環血液中に入ってから薬効をもたらす場合には、その作用は全身作用の一部であることに注意が必要である。

・外用薬の場合、適用部位に対する局所的な効果を目的としていることが多い。また、坐剤(ざざい)、経皮吸収製剤等では、適用部位から吸収された有効成分が、循環血液中に移行して全身作用を示すことを目的として設計されたものも存在する。

薬の副作用(全身作用と局所作用)

・薬の副作用にも、全身作用によるものと局所作用によるものとがある。局所作用を目的とする医薬品によって全身性の副作用が生じたり、逆に、全身作用を目的とする医薬品で局所的な副作用が生じることもある。

薬の生体内運命

・医薬品が体内で引き起こす作用(薬効と副作用)を理解するには、使用された医薬品が体内でどのような挙動を示し、どのように体内から消失していくのか(薬物動態)に関する知識が不可欠である。

有効成分の吸収

・全身作用を目的とする医薬品では、その有効成分が消化管等から吸収されて、循環血液中に移行することが不可欠である。

・循環血液中に移行せずに薬効を発揮する医薬品であっても、その成分が体内から消失する過程では、吸収されて循環血液中に移行する場合がある。

・局所作用を目的とする医薬品の場合は、目的とする局所の組織に有効成分が浸透して作用するものが多い。

消化管からの吸収

・内服薬のほとんどは、その有効成分が消化管から吸収されて循環血液中に移行し、全身作用を現す。

消化管からの吸収でのポイント

消化管からの吸収

・全身作用を目的としない内服薬は、本来、有効成分が消化管から吸収されることによって薬効を発揮するわけではなく、有効成分はそのまま糞便中に排泄(はいせつ)されることとなるが、中には消化管内を通過する間に結果的に吸収されてしまうものがある。その場合、循環血液中に移行した有効成分によって、好ましくない作用(副作用)を生じることがある。

粘膜からの吸収(内服以外の用法によるもの)

・内服以外の用法で使用される医薬品には、適用部位から有効成分を吸収させて、全身作用を発揮させることを目的とするものがある。

坐剤(直腸粘膜から吸収される薬)

・坐剤(ざざい)は、肛門(こうもん)から医薬品を挿入することにより、直腸内で溶解させ、薄い直腸内壁の粘膜から有効成分を吸収させるものである。直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布して通っており、有効成分は容易に循環血液中に入るため、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れる。

・なお、坐剤であっても、直腸上部から有効成分が吸収されると、肝臓で代謝を受け、全身へ分布する有効成分の量が少なくなる。

坐剤(直腸粘膜から吸収される薬)

口腔粘膜から吸収される薬

口に含むため内服と混同されやすいが、抗狭心症薬のニトログリセリン(舌下錠、スプレー)や禁煙補助薬のニコチン(咀嚼(そしゃく)剤)のように、有効成分が口腔(こうくう)粘膜から吸収されて全身作用を現すものもある。薬剤がどのような流れで作用しているのか確認しておこう。

内服薬と口腔粘膜から吸収される薬の吸収方法の違い

口腔粘膜から吸収される薬

・なお、医薬品によっては、適用部位の粘膜に刺激等の局所的な副作用を生じることがある。そのような副作用を回避するため、また、その有効成分の急激な吸収による全身性の副作用を回避するため、粘膜に障害があるときは使用を避けるべきである。

鼻腔粘膜から吸収される薬

・鼻腔(びくう)の粘膜に医薬品を適用する場合も、その成分は循環血液中に入るが、一般用医薬品には全身作用を目的とした点鼻薬はなく、いずれの医薬品も、鼻腔粘膜への局所作用を目的として用いられている。

・しかし、鼻腔粘膜の下には毛細血管が豊富なため、点鼻薬の成分は循環血液中に移行しやすく、また、坐剤(ざざい)等の場合と同様に、初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布する。そのため、全身性の副作用を生じる可能性がある。

点眼薬(目の粘膜から吸収される薬)

・眼の粘膜に適用する点眼薬は、鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがある。そのため、眼以外の部位に到達して副作用を起こすことがある。場合によっては点眼する際に目頭の鼻涙管の部分を押さえ、有効成分が鼻に流れるのを防ぐ必要がある。

含嗽薬(咽頭の粘膜から吸収される薬)

・咽頭の粘膜に適用する含嗽(がんそう。うがい)薬等の場合は、その多くが唾液や粘液によって食道へ流れてしまうため、咽頭粘膜からの吸収が原因で全身的な副作用が起こることは少ない。ただし、アレルギー反応は微量の抗原でも生じるため、点眼薬や含嗽薬等でもショック(アナフィラキシー)等のアレルギー性の副作用を生じることがある。

皮膚からの吸収

・皮膚に適用する医薬品(塗り薬、貼り薬等)は、適用部位に対する局所的な効果を目的とするものがほとんどである。殺菌消毒薬等のように、有効成分が皮膚の表面で作用するものもあるが、有効成分が皮膚から浸透して体内の組織で作用する医薬品の場合は、浸透する量は皮膚の状態※、傷の有無やその程度などによって影響を受ける。

※たとえば、加齢等により皮膚のみずみずしさが低下すると、有効成分が浸潤・拡散しにくくなる。

・通常は、皮膚表面から循環血液中へ移行する量は比較的少ないが、粘膜吸収の場合と同様に、血液中に移行した有効成分は、肝臓で代謝を受ける前に血流に乗って全身に分布するため、適用部位の面積(使用量)や使用回数、その頻度などによっては、全身作用が現れることがある。また、アレルギー性の副作用は、適用部位以外にも現れることがある。

薬の代謝

・代謝とは、物質が体内で化学的に変化することである。医薬品の有効成分も、循環血液中へ移行して体内を循環するうちに徐々に代謝を受けて、分解されたり、体内の他の物質が結合するなどして構造が変化する。その結果、作用を失ったり(不活性化)、作用が現れたり(代謝的活性化)、あるいは体外へ排泄(はいせつ)されやすい水溶性の物質に変化したりする。

薬の排泄

・排泄とは、代謝によって生じた物質(代謝物)が尿等で体外へ排出されることである。医薬品の有効成分は、未変化体のまま、あるいは代謝物として、腎臓から尿中へ、肝臓から胆汁中へ、または肺から呼気中へ排出される。

・体外への排出経路としては、その他に汗中や母乳中などがあるが、体内からの消失経路としての意義は小さい。ただし、有効成分の母乳中への移行は、乳児に対する副作用の発現という点で、軽視することはできない。

消化管で吸収された後に起こる代謝

・経口投与後、消化管で吸収された有効成分は、消化管の毛細血管から血液中へ移行する。その血液は全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓に到達し、そこで代謝を受けて全身へと向かう。有効成分は吸収時に比べて、肝臓で代謝される分少なくなる。これを肝初回通過効果という。

肝初回通過効果(first-pass effect)

消化管で吸収された後に起こる代謝

・肝機能が低下した人では医薬品を代謝する能力が低いため、正常な人に比べて全身循環に到達する有効成分の量がより多くなり、効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。

・なお、薬物代謝酵素の遺伝子型には個人差がある。また、小腸などの消化管粘膜や腎臓にも代謝活性があることが明らかにされている。

有効成分の代謝

・循環血液中に移行した有効成分は、主として肝細胞の薬物代謝酵素によって代謝を受ける。多くの有効成分は血液中で血漿(けっしょう)タンパク質と結合して複合体を形成している。なお、血漿タンパク質との結合は速やかかつ可逆的で、一つ一つの分子はそれぞれ結合と解離を繰り返している。

・複合体を形成している有効成分の分子は薬物代謝酵素の作用で代謝されず、またトランスポーター※によって輸送されることもない。したがって、代謝や分布が制限されるため、血中濃度の低下は徐々に起こる。

※細胞膜の脂質二重層を貫き、埋め込まれて存在する膜貫通タンパク質で、細胞膜の外側から内側へ極性物質、イオンを選択的に運ぶ。

有効成分の排泄

・循環血液中に存在する有効成分の多くは、未変化体または代謝物の形で腎臓から尿中に排泄(はいせつ)される。

・排泄の過程においても血漿タンパク質との複合体形成は重要な意味を持つ。複合体は腎臓で濾過されないため、有効成分が長く循環血液中に留まることとなり、作用が持続する原因となる。

・腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくい。そのため、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用を生せじやすくなったりする。